第三部:闘争
地域創生リーグ、ついに財務省との最終決戦へ。初年度7,120億円の赤字リスク、昇格率80%の実現可能性―梶原課長の条件付き賛成を勝ち取った小林たちは、2028年秋の国会提出に向けて動き出す。法案化への最後の闘い、第17章。
※この物語は政策エンタメのメソッドによって書かれたフィクションです。
第17章:財務省との最終決戦
2027年2月10日午後3時、東京・霞が関。
財務省主計局。
会議室に、20人が集まっていた。
財務省側:
- 梶原誠一財政課長
- 部下の課長補佐3名
- 主計官5名
総務省側:
- 大河内康介部長
- 氷室徹課長補佐
- 担当官3名
我々欲チーム:
- 小林拓也
- 桜井美咲
- 神山健二教授
- 結城剛
- 高瀬麗子議員
議題:地域創生リーグ 法案化の可否
梶原財政課長が、資料を開いた。
冷たい目。
「それでは、始めます」
「総務省から、地域創生リーグの法案化を求められています」
「しかし、財務省としては、依然として懸念があります」
「今日は、その懸念を解消できるかどうか、議論します」
大河内部長が、頷いた。
「よろしくお願いします」
梶原課長が、資料を示した。
財務省の懸念事項:
- 初年度の財政悪化が大きすぎる
- 初年度:▲7,120億円
- 数年間は赤字が続く
- 10年後の財政改善効果が不確実
- 1.5兆円削減は「楽観的すぎる」
- 昇格率80%は「達成困難」
- 失敗した自治体への追加支援が必要
- 再建支援チームの費用
- 費用が膨らむ可能性
- プラチナリーグの負担能力に疑問
- 湊戸区は特別
- 他の自治体は負担に耐えられない可能性
「これらの懸念が解消されない限り……」
梶原課長が、冷静に言った。
「財務省は、法案化に賛成できません」
会議室が、静まり返った。
小林が、立ち上がった。
「梶原課長、一つずつ、お答えします」
梶原課長が、小林を見た。
「どうぞ」
小林は、プロジェクターを操作した。
懸念1:初年度の財政悪化について
「確かに、初年度は▲7,120億円の財政悪化です」
小林が、スライドを開いた。
「しかし、これは『投資』です」
投資と回収のモデル:
初年度(1年目):
- 投資:8,320億円
- 回収:1,200億円
- 純支出:▲7,120億円
3年後:
- 投資(継続):8,320億円
- 回収:2,500億円
- 純支出:▲5,820億円
5年後:
- 投資(継続):8,320億円
- 回収:3,800億円
- 純支出:▲4,520億円
7年後:
- 投資(継続):8,320億円
- 回収:5,500億円
- 純支出:▲2,820億円
10年後:
- 投資(継続):8,320億円
- 回収:8,500億円
- 純利益:+180億円
15年後:
- 投資(縮小):5,000億円
- 回収:1.5兆円
- 純利益:+1兆円
「つまり、10年目で収支が黒字に転じます」
小林が、説明した。
「15年後には、累積で黒字になります」
「これは、インフラ投資と同じモデルです」
梶原課長が、質問した。
「しかし、10年間も赤字が続くのは、リスクが大きい」
「その間に、政権が変われば、制度が廃止される可能性もある」
高瀬麗子議員が、答えた。
「だからこそ、法律で定めるんです」
「『地域創生リーグ推進法』として」
「政権が変わっても、継続できる仕組みにします」
梶原課長が、資料を見た。
「……次の懸念に行きましょう」
懸念2:昇格率80%は達成困難
梶原課長が、資料を示した。
「湊戸区の12自治体のうち、成功率は83%です」
「しかし、これは『モデル事業』だからです」
「全国展開すれば、成功率は下がるはずです」
桜井美咲が、立ち上がった。
「梶原課長、その指摘は正しいです」
「しかし、我々はそれを織り込んでいます」
桜井が、スライドを開いた。
全国展開時の成功率予測:
モデル事業(湊戸区):
- 成功率:83%
- 理由:注目度が高い、ホーソン効果
全国展開(241自治体):
- 成功率予測:70%〜75%
- 理由:注目度の低下、自治体の能力差
保守的な予測:
- 成功率:65%
「つまり、我々は『80%成功』ではなく、『65%成功』を前提にしています」
桜井が、説明した。
「その場合の財政シミュレーションは、こうなります」
保守的シミュレーション(成功率65%):
10年後:
昇格自治体:
- 241自治体×65%=157自治体
地方交付税削減:
- 157自治体×30億円=4,710億円
支援継続費用:
- 84自治体×20億円=1,680億円
- マイナポイント:500億円
- 合計:2,180億円
純効果:
- 4,710億円▲2,180億円=2,530億円
さらに、他リーグの財政改善:
- 約3,000億円
合計:約5,500億円〜6,000億円の財政改善
「つまり、成功率が65%でも、6,000億円の財政改善が見込めます」
桜井が、会場を見た。
「1.5兆円ではありませんが、十分に効果があります」
梶原課長が、黙った。
懸念3:再建支援チームの費用
梶原課長が、次の資料を開いた。
「失敗した自治体への再建支援チーム、費用はいくらですか?」
神山健二教授が、答えた。
「1自治体あたり、年間5,000万円です」
「専門家3名を派遣し、1年間サポートします」
「全国展開で、失敗する自治体が35%と仮定すると……」
神山教授が、計算した。
「241自治体×35%=84自治体」
「84自治体×5,000万円=42億円」
「つまり、年間42億円の追加費用です」
神山教授が、続けた。
「しかし、この費用は『投資』です」
「再建支援を受けた自治体が立ち直れば、将来的には黒字になります」
梶原課長が、質問した。
「しかし、再建支援を受けても、立ち直れない自治体もあるでしょう」
「その場合は?」
小林が、答えた。
「その場合は、降格します」
「チャレンジリーグから、さらに支援を強化するか……」
「あるいは、別の支援策を検討します」
「しかし……」
小林は、梶原課長を見た。
「100%成功する政策は、ありません」
「重要なのは、成功率を最大化する努力です」
「我々は、それをやっています」
梶原課長が、黙った。
懸念4:プラチナリーグの負担能力
梶原課長が、最後の資料を開いた。
「湊戸区の税収は4,000億円です」
「しかし、他のプラチナリーグ自治体は、税収が少ない」
「例えば……」
梶原課長が、リストを示した。
プラチナリーグ20自治体の税収:
- 湊戸区:4,000億円
- 千谷田区:3,600億円
- 中区:3,500億円
- 渋沢区:3,200億円
- 世代谷区:3,000億円
- 品川北区:2,800億円
- 港南区:2,600億円
- 中心区(大阪):2,500億円 …
- 白銀市:1,800億円
- 青空市:1,700億円
- 泉ヶ岳市:1,600億円
「泉ヶ岳市は、税収が1,600億円しかありません」
梶原課長が、説明した。
「240億円の負担は、15%です」
「これは、持続可能とは言えません」
結城剛が、口を開いた。
「梶原課長、その通りです」
「だから、我々は『段階的支援』を提案します」
結城が、スライドを開いた。
段階的支援モデル:
プラチナリーグの支援額を、税収に応じて変動させる:
税収3,000億円以上:
- 支援額:240億円(12自治体×20億円)
- 負担率:8%以下
税収2,000〜3,000億円:
- 支援額:180億円(9自治体×20億円)
- 負担率:9%以下
税収1,500〜2,000億円:
- 支援額:120億円(6自治体×20億円)
- 負担率:8%以下
「つまり、税収が少ない自治体は、支援する自治体数を減らします」
結城が、説明した。
「これで、どの自治体も負担率を8〜9%に抑えられます」
梶原課長が、資料を見た。
「……なるほど」
「しかし、その場合、チャレンジリーグの241自治体すべてをカバーできますか?」
桜井が、答えた。
「はい。計算しました」
桜井が、スライドを開いた。
段階的支援モデルの全体像:
プラチナリーグ20自治体の支援総額:
- 税収3,000億円以上(10自治体):240億円×10=2,400億円
- 税収2,000〜3,000億円(8自治体):180億円×8=1,440億円
- 税収1,500〜2,000億円(2自治体):120億円×2=240億円
合計:4,080億円
チャレンジリーグ241自治体の必要支援額:
- 241自治体×20億円=4,820億円
不足額:
- 4,820億円▲4,080億円=740億円
この不足分は:
- ゴールドリーグ80自治体が補填
- 1自治体あたり約9億円の支援
「つまり、プラチナリーグとゴールドリーグが協力すれば……」
桜井が、説明した。
「241自治体すべてをカバーできます」
梶原課長が、黙った。
数分間、資料を見つめていた。
そして。
梶原課長が、立ち上がった。
「分かりました」
全員が、梶原課長を見た。
「財務省としては……」
梶原課長は、一度止まった。
そして、続けた。
「条件付きで、法案化に賛成します」
会議室が、ざわついた。
小林は、信じられない表情。
「本当ですか……?」
梶原課長が、頷いた。
「はい。ただし、以下の条件を満たすことが前提です」
梶原課長が、ホワイトボードに書いた。
財務省の条件:
- 段階的支援モデルを採用すること
- プラチナリーグの負担を税収に応じて変動
- ゴールドリーグも支援に参加
- 昇格・降格制度を厳格に運用すること
- 成果が出ない自治体は、容赦なく降格
- 再建支援チームの効果を毎年検証
- 毎年、国会に詳細報告を提出すること
- 全自治体のデータを開示
- 成功例も失敗例も、すべて公表
- 10年後の見直し条項を設けること
- 10年後、効果が不十分なら制度を廃止
- または、大幅に見直す
「これらの条件を満たせば……」
梶原課長が、小林を見た。
「財務省は、法案化に協力します」
小林は、涙が出そうになった。
「ありがとうございます……」
大河内部長も、立ち上がった。
「梶原課長、ありがとうございます」
「総務省としても、これらの条件を受け入れます」
梶原課長が、手を差し出した。
「では、合意ということで」
大河内部長も、握手を返した。
「はい。よろしくお願いします」
会議が、終わった。
午後6時。
会議室を出る。
小林、桜井、神山教授、結城、高瀬議員、氷室、大河内部長。
7人が、廊下に立っていた。
「やった……」
小林が、呟いた。
「本当に、やった……」
結城が、小林の肩を叩いた。
「小林くん、お前、すごいぞ」
「財務省を、説得した」
桜井も、微笑んだ。
「データが、完璧だったからよ」
神山教授が、言った。
「いや、データだけじゃない」
「小林さんの熱意が、梶原課長を動かしたんです」
高瀬議員も、涙を流していた。
「これで、法案化できる……」
「本当に、できる……」
氷室も、興奮していた。
「次は、国会ですね」
「2028年秋の臨時国会で、法案提出します」
大河内部長が、言った。
「みなさん、お疲れ様でした」
「しかし、闘いはまだ終わっていません」
「国会で、必ず通さなければなりません」
小林は、頷いた。
「はい。分かっています」
その夜。
小林は、夕焼市に電話した。
倉田市長が、出た。
「もしもし、倉田さん」
「おお、小林くん。どうだった?」
小林は、今日の出来事を説明した。
財務省との会議。
梶原課長の条件付き賛成。
法案化への道。
「本当か!?」
倉田の声が、弾んだ。
「やったな、小林くん!」
「ついに、法案化だ!」
小林は、微笑んだ。
「はい。でも、まだ油断できません」
「国会で、必ず通さないといけません」
「大丈夫だ」
倉田の声が、力強かった。
「お前たちなら、できる」
「我々欲チーム、最強だからな」
小林は、頷いた。
「はい。頑張ります」
電話を切る。
小林は、窓の外を見た。
東京の夜景。
「父さん……」
小林は、呟いた。
「もう少しです」
「もう少しで、全国に広がります」
翌日、2月11日。
記者会見。
総務省と財務省の合同記者会見。
大河内康介部長と、梶原誠一財政課長が並んで座った。
カメラのフラッシュ。
「本日、総務省と財務省は、地域創生リーグの法案化について、合意しました」
大河内部長が、発表した。
記者たちが、ざわついた。
「本当ですか!?」
「財務省が賛成したんですか!?」
梶原課長が、答えた。
「はい。条件付きですが、賛成します」
「詳細は、資料をご覧ください」
記者たちが、資料を開いた。
記者A:
「梶原課長、なぜ賛成したんですか?」
「これまで、反対していたと聞いていますが」
梶原課長が、答えた。
「確かに、最初は懐疑的でした」
「しかし、湊戸区、千谷田区、中区のモデル事業で、明確な成果が出ました」
「データが、完璧でした」
「さらに……」
梶原課長は、一度止まった。
「私自身、先月、夕焼市を訪問しました」
記者たちが、ざわついた。
「夕焼市に?」
「梶原課長が?」
「現場を見ないと、判断できないと思ったからです」
梶原課長が、続けた。
「夕焼市では、メロン農家の方々と話しました」
「彼らは、『もう諦めていた。でも、湊戸区の支援で、希望が戻った』と言っていました」
「子供たちが、笑顔で遊んでいました」
「若い夫婦が、Uターンしてきていました」
「商店街に、少しずつ、活気が戻っていました」
梶原課長の声が、少し震えた。
「私は、愛媛県の小さな町の出身です」
「人口8,000人。夕焼市と同じような状況です」
「だから……地方の苦しみが、分かるんです」
記者たちが、静まり返った。
「財務省の仕事は、国の財政を守ることです」
梶原課長が、続けた。
「しかし、国を守るということは……」
「地方を守ることでもあるんです」
「地方が消滅すれば、日本は成り立ちません」
「食料も、水も、自然も、すべて地方から来ています」
「だから……」
梶原課長は、記者たちを見た。
「この制度は、必要です」
「財務省としても、協力します」
記者たちが、メモを取った。
会場が、静まり返った。
記者B:
「法案は、いつ国会に提出されますか?」
大河内部長が、答えた。
「2028年秋の臨時国会を予定しています」
「それまでに、3つの自治体でモデル事業を完了させます」
記者C:
「国民の負担は、増えますか?」
梶原課長が、答えた。
「初年度は、一時的に財政が悪化します」
「しかし、10年後には黒字に転じます」
「長期的には、国民の負担は減ります」
記者会見が、終わった。
その夜。
ニュース番組。
アナウンサー:
「本日、総務省と財務省が、地域創生リーグの法案化について合意しました」
「この制度は、豊かな自治体が、厳しい自治体を支援する、全く新しい仕組みです」
画面に、夕焼市の映像。
新しいメロンハウス。
笑顔の住民たち。
アナウンサー:
「北海道の夕焼市では、1年間で自主財源が22.5%増加しました」
「『この街に、希望が戻った』と、住民たちは語ります」
画面に、湊戸区の映像。
交流イベントに参加する住民たち。
アナウンサー:
「湊戸区の住民の91%が、この制度の継続を希望しています」
「『地方と繋がって、人生が豊かになった』という声が多く聞かれます」
画面に、小林拓也のインタビュー。
小林:
「我欲を捨てて、我々欲で」
「みんなで支え合う日本を、作りたいんです」
アナウンサー:
「地域創生リーグは、2029年秋に全国展開される予定です」
「241の自治体が、救われるかもしれません」
翌日、2月12日。
新聞各紙の社説。
【毎朝新聞】社説:地域創生リーグに期待する
「総務省と財務省が、地域創生リーグの法案化に合意した。これは、画期的な一歩である。地方の疲弊は、日本全体の危機である。都市と地方が支え合う仕組みは、今こそ必要だ。梶原財政課長の『国を守ることは、地方を守ることだ』という言葉は、重い。国会での真摯な議論を期待する」
【読報新聞】社説:地域創生リーグ、慎重な検証を
「地域創生リーグは、興味深い構想だが、財政リスクも大きい。初年度7,000億円の赤字は、国民負担に直結する。10年後の黒字転換は、楽観的すぎないか。梶原課長の現場訪問は評価するが、感情論に流されてはならない。国会では、徹底的なデータ検証が必要だ」
【日日経済新聞】社説:地方の自立を促す仕組みか
「地域創生リーグは、支援と自立のバランスが取れている。昇格・降格制度により、自治体に努力のインセンティブが働く。段階的支援モデルも、現実的だ。ただし、失敗した自治体への追加支援が膨らめば、制度は破綻する。厳格な運用が求められる」
【経産新聞】社説:地域創生リーグに反対する
「なぜ、都市の税金を地方に送らなければならないのか。地方の衰退は、市場原理の結果である。自然淘汰を受け入れるべきだ。経産に延命させても、税金の無駄遣いに終わる。梶原課長は感情に流されている。この構想は、バラマキ政策に過ぎない」
【東京報日新聞】社説:都市住民の声も聞くべき
「地域創生リーグは、都市住民に新たな負担を強いる。湊戸区では87%が賛成したというが、全国でも同じ結果になるとは限らない。都市住民への丁寧な説明と、十分な合意形成が必要だ。拙速な全国展開は避けるべきである」
テレビのワイドショー。
コメンテーターたちが、議論している。
コメンテーターA(経済学者):
「私は、賛成です。地方が消滅すれば、都市も困ります。食料自給率が下がり、輸入依存が高まります。これは、安全保障の問題でもあるんです。梶原課長の判断は、正しいと思います」
コメンテーターB(経営コンサルタント):
「私は、反対です。自治体に甘えの構造を作ります。支援を受ければ楽ですから、自分で努力しなくなります。昇格・降格制度があっても、形骸化する可能性が高い。梶原課長は、感情に流されすぎです」
コメンテーターC(社会学者):
「データを見る限り、効果は出ています。ただし、83%の成功率が全国展開でも維持できるかは、疑問です。都市部の特定の自治体が注目している『モデル事業』と、全国展開では、状況が違います。慎重な検証が必要です」
司会者:
「みなさん、意見が分かれていますね。国会での議論が、注目されます」
SNS上の反応。
Xのトレンド:
「#地域創生リーグ」
「#我々欲」
「#夕焼市」
「#梶原課長」
賛成派のポスト:
「地域創生リーグ、めっちゃいいじゃん。地方を救えるなら、3万円くらい喜んで払うよ」
「交流イベント、行きたい!地方の魅力、知りたい!」
「我々欲、素晴らしい言葉。これからの日本に必要な考え方だと思う」
「梶原課長、泣いた。現場を見たから、分かったんだね」
反対派のポスト:
「なんで俺の税金を地方に送らなきゃいけないの?地方が勝手に衰退しただけでしょ」
「7,000億円の赤字とか、ヤバすぎ。増税フラグじゃん」
「地方の自己責任。市場原理に任せるべき」
「梶原課長、感情論すぎ。財務省の役人が感情で動くとか、終わってる」
中立派のポスト:
「地域創生リーグ、面白い構想だけど、本当にうまくいくのかな?」
「データは良さそうだけど、全国展開したら失敗する気がする」
「国会での議論、ちゃんと見ないとな」
「梶原課長の気持ちは分かるけど、財政のプロとして冷静に判断してほしい」
小林拓也の部屋。
小林は、新聞とスマートフォンを見ていた。
賛成論。
反対論。
様々な意見。
「反対する人も、たくさんいる……」
小林は、呟いた。
結城剛から、電話が来た。
「小林くん、ネット見たか?」
「はい。反対派も、多いですね……」
「当たり前だ」
結城の声が、落ち着いていた。
「新しい制度には、必ず反対がある」
「でも、気にするな」
「俺たちには、データがある」
「そして、夕焼市の成功がある」
「国会で、ちゃんと説明すれば……」
「必ず、理解してもらえる」
小林は、頷いた。
「はい。分かりました」
電話を切る。
小林は、窓の外を見た。
「反対派も、いる」
「でも……諦めない」
「国会で、必ず説得する」
小林は、ノートを開いた。
やるべきこと:
- 千谷田区・中区でのモデル事業開始(2027年4月)
- 3自治体のデータ収集(2027年4月〜2028年夏)
- 法案作成(2028年夏)
- 国会提出(2028年秋)
- 国会審議(2028年秋〜2029年春)
- 全国展開(2029年秋)
「あと2年半……」
小林は、呟いた。
「長い闘いになる」
「でも、諦めない」
窓の外。
星が、輝いている。
「父さん……」
小林は、呟いた。
「反対派も、たくさんいます」
「でも、俺は闘います」
「国会で、必ず勝ちます」
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