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【ドラマ】発芽〜教室に咲いた奇跡〜第2話「手探りの第一歩」

給食を囲んで座る4人の小学生のイラスト。それぞれの頭上に国語(本)、算数(割り算記号)、理科(実験器具)を表す吹き出しが浮かんでおり、給食について多角的に考えている様子を表現している。

※この物語はフィクションです。

前回までのあらすじ: 青葉台小学校に赴任した美咲は、校長から「発芽カリキュラム」という未知の教育手法を任された。五年三組の子どもたちとの初対面を終え、この新しい学習方法への第一歩を踏み出そうとしていた。

今回の見どころ: ついに始まった発芽カリキュラムの実践。給食をテーマに教科横断の授業を試みるが、子どもたちは困惑し、美咲自身も指導法に迷う。国語の作文、算数の栄養計算で次々と壁にぶつかる美咲。果たして新しい教育への挑戦は成功するのか…

翌日の朝の会で、美咲は子どもたちに提案した。

「昨日話した発芽カリキュラムのテーマを決めたいと思います。みんなで『給食』について調べてみませんか?」

「給食?」

子どもたちの反応は微妙だった。

「毎日食べてるから、つまらなくない?」

健太が首をかしげた。

「そうかな。給食がどこから来るのか、誰が作っているのか、考えたことある?」

美咲は子どもたちの顔を見回した。

「給食のおばちゃんが作ってる」

後ろの席の子が答えた。

「その材料はどこから来るの?どうやって栄養バランスを考えているの?世界には給食がない国もあるよね」

だんだん子どもたちの表情が変わってきた。

「私、給食のメニューを決めてる人に会ってみたい」

花音が手を挙げた。

「僕は、野菜を作ってる農家の人に話を聞いてみたい」

健太も興味を示した。

教室で電子黒板を使って給食について授業をする西川美咲先生のイラスト。画面には給食のトレーが映っており、手を挙げて発言する男子児童と、集中して聞いている他の児童たちが描かれている。

「じゃあ、それも含めて調べてみましょう。国語の時間は給食について作文を書いて、算数では栄養計算、理科では消化の仕組み、社会では農業について学習します」

美咲の説明に、子どもたちの目が輝き始めた。

「先生、それって面白そう!」

「いつから始めるの?」

美咲は子どもたちの反応に安堵した。

「来週から始めましょう。みんなで協力して、給食の秘密を解明していこう」

教室に拍手が響いた。


しかし、実際に始めてみると、問題は山積みだった。

国語の時間、美咲は給食について作文を書かせようとしたが、子どもたちは「何を書けばいいか分からない」と困惑した。

「先生、いつもの作文と何が違うの?」

花音が質問した。

美咲も戸惑った。発芽カリキュラムでの作文は、従来の作文とどう違うのか。資料を読み返しても、具体的な指導法が書かれていない。

「えーと、給食を食べた感想だけじゃなくて、給食について疑問に思ったことや、調べてみたいことを書いてみて」

美咲は場当たり的に答えた。

算数の時間はもっと大変だった。栄養計算と言っても、小学五年生にどこまで教えるべきか分からない。カロリー計算は難しすぎるし、かといって単純な足し算では物足りない。

「先生、これって本当に算数なの?」

健太が不満そうに言った。

「算数は算数でちゃんと勉強したい」

他の子からも同じような声が上がった。

美咲は冷や汗をかいた。発芽カリキュラムに対する子どもたちの不信感が生まれている。


その夜、美咲は家で一人、膨大な資料と向き合っていた。

「私には無理なのかもしれない」

スマートフォンが鳴った。母からの電話だった。

「美咲、元気?新しい学校はどう?」

「うん、まあ…」

美咲は母に発芽カリキュラムのことを話した。

自宅で母親と電話をしている美咲のイラスト。机に向かい、困った表情で電話をしている美咲と、吹き出しの中で笑顔で電話をしている母親の姿が描かれている。部屋にはスタンドライトと資料が見える。

「新しいことに挑戦するのは大変だけど、美咲らしいじゃない。昔から、人と違うことをするのが好きだったでしょ」

母の言葉に、美咲は小さく笑った。

「でも、子どもたちに迷惑をかけてるんじゃないかって思うの」

「美咲が一生懸命やってることは、きっと子どもたちにも伝わるよ。完璧じゃなくてもいいじゃない」

電話を切った後、美咲は机に向かった。完璧を求めすぎていたのかもしれない。まずは子どもたちと一緒に、一歩ずつ進んでいこう。


翌日、美咲は子どもたちに正直に話した。

「みんな、ごめんなさい。先生も発芽カリキュラムは初めてで、戸惑っています。でも、みんなと一緒に新しい学び方を見つけていきたいんです」

教室が静まり返った。

「先生も分からないの?」

健太が心配そうに聞いた。

「うん、分からないことだらけ。でも、それっていけないことかな?」

美咲は子どもたちの顔を見回した。

「先生だって、毎日新しいことを学んでいる。みんなと同じなんです」

花音が手を挙げた。

「じゃあ、私たちも先生と一緒に考えてもいいですか?」

「もちろん。むしろ、みんなの意見を聞かせてほしい」

子どもたちの表情が明るくなった。

「僕、給食センターに見学に行ってみたい」

健太が提案した。

「私は、栄養士さんにインタビューしてみたい」

花音も続いた。

「それぞれのアイデアを実現していこう。先生も一緒に学ばせてもらいます」

美咲の言葉に、教室に活気が戻った。

第2話完

※この物語はフィクションです。登場する人物・組織名等は架空のものであり、実在の人物・企業とは関係ありません。

前回「新しい風」 – 美咲先生の赴任と発芽カリキュラムとの出会い

次回「現場の声」ー給食センター見学で見えた新たな発見はこちら

発芽カリキュラム解説記事 – 実際の教育現場での活用法

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