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【ドラマ】発芽〜教室に咲いた奇跡〜第3話「現場の声」

給食センターを見学する美咲先生と子どもたちのイラスト。白衣と帽子を着た3人の調理スタッフが大きな鍋でカレーを作っている様子を、美咲先生と5人の児童が興味深そうに見学している。

※この物語はフィクションです。

前回までのあらすじ: 発芽カリキュラムの実践が始まったものの、給食をテーマにした教科横断の授業で美咲は壁にぶつかった。子どもたちは困惑し、国語の作文も算数の栄養計算もうまくいかない。美咲は子どもたちと一緒に学ぶ姿勢を見せ、徐々に信頼関係を築き始めていた。

今回の見どころ: 給食センター見学で大きな転機が訪れる。三千食を作る現場の迫力と栄養士の熱い思いに触れた子どもたち。見学後、教室に戻った彼らの目には今まで見たことのない輝きがあった。発芽カリキュラムの真の可能性を感じ始めた美咲だが、この後に予想外の試練が待ち受けているとは、まだ知る由もなかった…

二週間後、美咲と子どもたちは給食センターを見学していた。

巨大な調理場で、白衣を着たスタッフが大きな釜でカレーを作っている。

「一日に三千食作るんですよ」

案内してくれた栄養士の田辺さんが説明した。

「三千食?」

子どもたちが驚いた。

「この学校だけじゃなくて、近隣の五つの学校の給食を作っています」

健太が手を挙げた。

「メニューはどうやって決めるんですか?」

「栄養バランスを考えて、一週間、一ヶ月単位で計画します。子どもたちの成長に必要な栄養素を計算して、それに合わせて食材を選んでいます」

花音が質問した。

「一番大変なことは何ですか?」

「食物アレルギーの子どもたちへの対応ですね。一人ひとりに合わせて、別のメニューを用意することもあります」

子どもたちは真剣に聞いていた。

「給食を残さず食べてもらえると、とても嬉しいです」

田辺さんの言葉に、子どもたちは深くうなずいた。

見学から帰った後、教室は興奮状態だった。

「すごかった!」

「三千食なんて想像できない」

「今度から絶対に残さない」

美咲は子どもたちの反応を見て、発芽カリキュラムの可能性を感じていた。

国語の時間、子どもたちは見学で学んだことを作文にまとめた。

健太は「三千人の笑顔のために」というタイトルで、給食センターで働く人たちの思いを書いた。

花音は「食べることの意味」というタイトルで、食物アレルギーの友達のことを思いながら給食について考えを深めた。

算数の時間は、三千食分の材料を計算した。

「ニンジンが三百キロ必要なんだって」

「一日でお米が百五十キロ」

「僕たちが食べる分は、全体の何分の一かな?」

子どもたちは自然に割合の計算を始めていた。

理科の時間は、栄養素について学習した。

「炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル。これらのバランスが大切なんだね」

社会の時間は、給食の食材がどこから来るのかを調べた。

「お米は新潟県から」

「野菜は地元の農家から」

「魚は静岡県から」

日本地図に色を塗りながら、子どもたちは食材の流通について学んでいた。

美咲は子どもたちの変化に驚いていた。従来の授業では見られない集中力と探究心を発揮している。

ある日の職員室で、山田先生が美咲に声をかけた。

「五年三組の子どもたち、最近とても生き生きしていますね」

「そうですか?」

美咲は嬉しそうに答えた。

「廊下で会うと、給食の話ばかりしています。『今日の野菜は地元産だよ』とか『この栄養素が足りないから牛乳を飲まなきゃ』とか」

「みんな、本当に熱心に取り組んでくれています」

「でも、大変でしょう。準備が」

山田の指摘は的確だった。発芽カリキュラムの準備は、従来の授業の三倍は時間がかかる。

「確かに大変です。でも、子どもたちの反応を見ていると、やりがいを感じます」

美咲は正直に答えた。

「来年度、私たちも導入することになっています。今度、相談に乗ってもらえませんか?」

「私なんかでよろしければ」

美咲は謙遜した。

「いえいえ、実践している先生の話が一番参考になります」

第3話完

※この物語はフィクションです。登場する人物・組織名等は架空のものであり、実在の人物・企業とは関係ありません。

前回「手探りの第一歩」 – 給食テーマでの試行錯誤

次回「信頼の架け橋」 – 保護者からの予想外の反発が待っていた…はこちら

発芽カリキュラム解説記事 – 実際の教育現場での活用法

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