※この物語はフィクションです。
前回までのあらすじ: 稲穂が実り、収穫の喜びを分かち合った美咲と子どもたち。自分たちで育てたお米でおにぎりパーティーを開き、達成感に満ちていた。花音の「発芽カリキュラムって本当に種みたい」という言葉に、美咲は教育の本質を見出していた。そして、一年間の学習をまとめる発表会の日がついに訪れる。
今回の見どころ: 体育館で行われる発表会で、子どもたちが一年間の学習成果を披露する。健太は農業への夢を語り、会場は感動に包まれる。美咲は教師として、そして一人の人間として大きく成長した自分を実感する。子どもたちと共に歩んだ発芽カリキュラムの軌跡を振り返り、教育への新たな確信を深める感動のフィナーレ。そして物語は感動的なエピローグへと続いていく…
三学期、美咲と子どもたちは一年間の学習をまとめる発表会を開催した。
体育館には、保護者や他のクラスの子どもたちが集まった。
「私たちは一年間、発芽カリキュラムで学習してきました」
花音が司会を務めた。
「給食について調べて、食べ物の大切さを学びました」
健太が給食センター見学の報告をした。
「お米を育てて、農業の大変さと喜びを体験しました」
グループごとに、学習の成果を発表していく。
ある班は、給食の栄養バランスをグラフで示した。
「私たちの給食は、とてもバランスよく作られています。でも、世界には栄養不足で困っている子どもたちもいます」
別の班は、お米の品種について調べた結果を発表した。
「日本には三百種類以上のお米があります。コシヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまち…それぞれに特徴があります」
健太は、農家の高齢化問題について発表した。
「農家の平均年齢は六十七歳です。このままだと、日本の農業が大変なことになります。僕は将来、農家になって日本の農業を支えたいです」
会場から温かい拍手が送られた。
最後に、美咲が挨拶した。
「一年間、発芽カリキュラムを通して、子どもたちと一緒に学ばせていただきました。最初は戸惑うことばかりでしたが、子どもたちの探究心と成長する姿に、私自身も多くのことを教えられました」
美咲は子どもたちを見渡した。
「発芽カリキュラムの『発芽』とは、種が芽を出すことです。でも、芽を出すのは子どもたちだけではありませんでした。私自身も、教師として新しい芽を出すことができました」
会場は静寂に包まれた。
「教育に正解はないと思います。でも、子どもたちと一緒に悩み、一緒に学び、一緒に成長していくことが、教師の役割なのではないでしょうか」
美咲の言葉に、保護者たちは深くうなずいた。
発表会の後、佐々木PTA会長が美咲のところにやってきた。
「西川先生、素晴らしい発表会でした」
「ありがとうございます」
「最初は心配していましたが、子どもたちの成長ぶりを見て、発芽カリキュラムの効果を実感しました」
佐々木さんの表情は穏やかだった。
「来年度も続けてください。私たちも協力します」
美咲は深々と頭を下げた。
春が訪れ、新年度が始まった。
美咲は今年も五年生の担任となった。新しい三十人の子どもたちが、期待に満ちた目で美咲を見つめている。
「みなさん、おはようございます。西川美咲です。今年一年、よろしくお願いします」
美咲の声には、去年とは違う自信が込められていた。
「今年も発芽カリキュラムで学習していきます。一つのテーマを、みんなで色々な角度から調べていきましょう」
新しい子どもたちの目が輝いた。
「先生、どんなテーマですか?」
元気な男の子が手を挙げた。
「それは、みんなで決めていきましょう。先生も一緒に学ばせてもらいます」
美咲は笑顔で答えた。
教室の窓の外では、桜の花びらが舞っている。新しい季節の始まりだった。
最終話完
※この物語はフィクションです。登場する人物・組織名等は架空のものであり、実在の人物・企業とは関係ありません。