第二部:創造
賛成率80.7%——目標70%を大幅突破。クラウドファンディング6時間で300万円達成、区議会可決、総務省承認。4月1日、地域創生リーグ始動。湊戸区300人が夕焼市訪問「こんな甘いメロン初めて」。我々欲が、日本を変え始めた。
※この物語は政策エンタメのメソッドによって書かれたフィクションです。
第12章:地域創生リーグ、始動
2026年1月20日午前11時30分、湊戸区民ホール。
質疑応答の時間。
会場の至る所で、手が挙がった。
司会の結城剛が、一人を指名する。
「はい、前から3列目の方」
質問者A(40代男性、会社員):
「質問があります」
男性が、立ち上がった。
「私の住民税は、本当に増えないんですか?」
小林拓也が、答えた。
「はい。住民税率は変わりません」
「湊戸区が支援するのは、区の税収からです」
「個人の住民税が増えることは、ありません」
男性が、続けた。
「でも、区の税収が減れば、サービスが低下するんじゃないですか?」
桜井美咲が、答えた。
「試算では、影響は限定的です」
「湊戸区の税収4,000億円のうち、285億円の負担は7.1%」
「しかも、地方交付税の調整があるので、実質的な影響はさらに小さくなります」
質問者B(30代女性、主婦):
「私、地方出身なんです。この制度、素晴らしいと思います」
「でも……本当に実現できるんですか?」
高瀬麗子議員が、答えた。
「実現させます」
「今日、この場で湊戸区民のみなさんの賛同を得られれば……」
「4月から、モデル事業として開始します」
「そして、来年には法案化します」
女性が、涙を浮かべた。
「お願いします。私の実家も、過疎化で苦しんでます」
「絶対に、実現してください」
質問者C(60代男性、自営業):
「私は、反対です」
会場が、ざわついた。
男性が、続けた。
「なぜ、湊戸区の税金を、地方に送らなきゃいけないんですか?」
「地方が衰退したのは、地方の自己責任でしょう」
「我々が、尻拭いする必要はない」
会場が、静まり返った。
小林は、深呼吸した。
そして、答えた。
「おっしゃる通り、自己責任という考え方もあります」
「でも……」
小林は、男性を見た。
「日本は、一つの国です」
「地方が作る食料を、都市が食べています」
「地方が守る森林が、都市の水を生んでいます」
「地方が維持する道路が、都市と地方を繋いでいます」
「もし、地方が消滅したら……」
「都市だけでは、成り立たないんです」
男性は、黙った。
小林は、続けた。
「それに、この制度は『一方的な支援』ではありません」
「湊戸区の住民のみなさんには、3万円のマイナポイント」
「12自治体との交流イベント」
「特産品」
「これらが、すべて返ってきます」
「単なる『税金を取られる』ではなく……」
「『日本全体を強くする投資』なんです」
男性は、腕を組んだ。
「……考えてみます」
そう言って、座った。
質問者D(20代女性、大学生):
「私、この構想、めちゃくちゃいいと思います!」
会場から、拍手。
「SNSで見て、今日来ました」
「クラウドファンディング、絶対参加します」
「ロゴのTシャツ、欲しいです!」
結城が、笑った。
「ありがとう。クラウドファンディングは、今日の午後6時から開始します」
「みんな、よろしく!」
質問者E(50代女性、区議会議員):
「私は、湊戸区議会の議員です」
会場が、静まり返った。
「正直に言います」
「区議会でも、この構想には賛成派と反対派がいます」
「私自身も、最初は懐疑的でした」
「でも……」
議員は、小林を見た。
「今日のプレゼンを聞いて、考えが変わりました」
「データがしっかりしている」
「心理学に基づいている」
「そして、何より……」
議員の目が、潤んでいた。
「倉田市長の話を聞いて、心が動きました」
「私、賛成します」
「区議会でも、全力で推します」
会場から、大きな拍手。
小林は、深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
質問者F(70代男性、元会社役員):
「一つ、確認したい」
男性が、立ち上がった。
「昇格・降格の仕組みについて」
「チャレンジリーグからブロンズリーグへの昇格条件は、具体的に何ですか?」
桜井が、答えた。
「3つの指標です」
「第一に、自主財源の増加率。年平均3%以上」
「第二に、人口減少率の改善。現状から30%以上の改善」
「第三に、ふるさと納税の増加。3年間で30%以上の増加」
「この3つをクリアすれば、昇格できます」
男性が、頷いた。
「分かりました。つまり、ただ支援を受けるだけじゃなく……」
「自治体自身も、努力しないといけないわけですね」
桜井が、頷いた。
「その通りです」
「支援と自助の、両立です」
男性は、微笑んだ。
「いい仕組みだ。私も、賛成します」
拍手。
午後12時。
質疑応答が終わった。
結城が、マイクを持った。
「みなさん、ありがとうございました」
「最後に、お願いがあります」
結城が、スクリーンを指した。
「アンケートにご協力ください」
「今、スタッフが紙を配っています」
「この構想に、賛成か反対か」
「匿名で構いません。正直にお答えください」
スタッフが、アンケート用紙を配り始めた。
会場の500人が、用紙を受け取る。
アンケート:
地域創生リーグ構想について
Q1:この構想に賛成ですか?
□ 強く賛成する
□ やや賛成する
□ どちらとも言えない
□ やや反対する
□ 強く反対する
Q2:クラウドファンディングに参加したいですか?
□ はい
□ いいえ
□ 検討中
Q3:交流イベントに参加したいですか?
□ はい
□ いいえ
□ 検討中
Q4:ご意見・ご感想(自由記述)
会場の人々が、記入し始める。
小林は、舞台袖で見ていた。
神山教授が、横に来た。
「小林さん、お疲れ様でした」
「完璧なプレゼンでしたよ」
小林は、微笑んだ。
「ありがとうございます」
「でも……結果が怖いです」
桜井も、来た。
「大丈夫。反応は良かった」
「賛成派の方が、多いと思う」
倉田市長も、来た。
「小林くん……」
倉田の目が、赤い。
「ありがとう。お前のおかげだ」
小林は、首を振った。
「みんなのおかげです」
午後12時30分。
アンケートの回収が終わった。
結城が、スタッフに集計を指示する。
「急いでくれ」
午後1時。
集計結果が出た。
結城が、封筒を受け取る。
中を見る。
結城の表情が、変わった。
小林が、聞いた。
「どうでしたか……?」
結城は、封筒を開けた。
紙を取り出す。
そして、みんなに見せた。
集計結果:
回答数:487名(回収率97.4%)
Q1:賛成率
・強く賛成する:235名(48.2%)
・やや賛成する:158名(32.4%)
・どちらとも言えない:52名(10.7%)
・やや反対する:28名(5.7%)
・強く反対する:14名(2.9%)
賛成(強く賛成+やや賛成):393名(80.7%)
反対(やや反対+強く反対):42名(8.6%)
Q2:クラウドファンディング参加意向
・はい:312名(64.1%)
・いいえ:85名(17.5%)
・検討中:90名(18.5%)
Q3:交流イベント参加意向
・はい:358名(73.5%)
・いいえ:62名(12.7%)
・検討中:67名(13.8%)
小林は、数字を見た。
「80.7%……」
神山教授が、叫んだ。
「やった!」
「目標の70%を、大幅に超えた!」
桜井も、珍しく笑顔を見せた。
「80.7%……信じられない」
「これなら、区議会も通る」
高瀬議員も、興奮していた。
「国会でも、この数字を示せば……」
「反対する理由がない!」
倉田市長は、涙を流していた。
「本当に……本当に……」
「夢じゃないのか……」
小林も、涙が止まらなかった。
「父さん……見ててくれましたか……」
結城が、小林の肩を叩いた。
「小林くん、やったぞ」
「我々欲チーム、勝利だ!」
5人が、抱き合った。
神山教授。
桜井美咲。
結城剛。
高瀬麗子議員。
小林拓也。
そして、倉田誠市長も。
6人が、円陣を組んだ。
「我々欲チーム、万歳!」
結城が、叫んだ。
「万歳!」
みんなが、声を合わせた。
午後6時。
クラウドファンディングが開始された。
プロジェクト名:「地域創生リーグのロゴを、みんなで作ろう」
目標金額:300万円
期間:30日間
開始から1時間。
支援額:50万円
支援者:167名
開始から3時間。
支援額:150万円
支援者:500名
開始から6時間。
支援額:300万円
達成!
結城のオフィスで、6人が見ていた。
「6時間で達成!?」
小林が、驚いた。
神山教授が、笑った。
「ホットコグニション効果です」
「説明会で感動した住民が、すぐに行動に移した」
「完璧なタイミングでした」
桜井が、画面を見た。
「しかも、まだ増え続けてる」
「最終的には、500万円くらい行くんじゃない?」
翌日、1月21日。
クラウドファンディング:700万円達成
支援者:2,300名
1週間後、1月27日。
クラウドファンディング:1,200万円達成
支援者:4,000名
結城が、笑った。
「もう目標の4倍だ」
「ロゴだけじゃなくて、他のことにも使えるな」
神山教授が、提案した。
「余剰金は、交流イベントの費用に充てましょう」
「住民の参加費を、もっと安くできます」
桜井が、頷いた。
「賛成」
2月1日。
湊戸区議会で、正式に議案が提出された。
「地域創生リーグ構想 モデル事業実施に関する件」
議員50名のうち、賛成35名、反対12名、棄権3名。
可決。
小林は、傍聴席で見ていた。
涙が、止まらなかった。
「やった……本当に、やった……」
2月15日。
総務省で、記者会見。
大河内康介部長が、発表した。
「地域創生リーグ構想のモデル事業を、4月から開始します」
「湊戸区と、チャレンジリーグ12自治体」
「1年間の実証実験を行い、効果を検証します」
「成果が出れば、全国展開を検討します」
記者から、質問。
「なぜ、この構想を承認したんですか?」
大河内部長が、答えた。
「データが完璧だったからです」
「そして……」
大河内部長は、小林を見た。
小林も、会見場にいた。
「提案者の熱意に、心を動かされました」
記者会見の後。
大河内部長が、小林のところに来た。
「小林さん」
「はい」
「最初は、無理だと思ってました」
大河内部長は、微笑んだ。
「でも……あなたが、データを揃えて、仲間を集めて、住民を説得した」
「見事でした」
小林は、深く頭を下げた。
「大河内部長、ありがとうございました」
大河内部長が、手を差し出した。
「こちらこそ。日本を変えてください」
握手。
3月1日。
デザイナーから、ロゴマークが納品された。
プラチナリーグ: プラチナ色の盾に、星が5つ。
ゴールドリーグ: 金色の盾に、星が4つ。
シルバーリーグ: 銀色の盾に、星が3つ。
ブロンズリーグ: 銅色の盾に、星が2つ。
チャレンジリーグ: 赤い炎のエンブレム。
小林は、チャレンジリーグのエンブレムを見た。
燃え上がる炎。
「挑戦者……」
小林は、呟いた。
3月15日。
夕焼市役所に、エンブレムが届いた。
倉田市長が、それを掲げた。
「これが、我々の旗だ」
職員たちが、拍手。
市民たちも、集まってきた。
「チャレンジリーグ!」
「頑張ろう!」
歓声。
小林は、その光景を見ていた。
「やっと……ここまで来た」
4月1日。
地域創生リーグ、モデル事業、開始。
湊戸区の住民に、3万円のマイナポイントが配布された。
15万人のうち、12.8万人が申請。
受給率:85.3%。
夕焼市には、20億円の支援金が振り込まれた。
倉田市長が、記者会見。
「この20億円で、この街を再建します」
「メロンハウスの近代化」
「道路の整備」
「子育て支援の拡充」
「必ず、チャレンジリーグから昇格します」
5月。
第1回交流イベント。
湊戸区の住民300人が、夕焼市を訪問。
メロン畑の見学。
温泉体験。
夕焼市の住民との交流会。
湊戸区の若い夫婦が、メロンを食べた。
「美味しい……!」
「こんなに甘いメロン、初めて!」
夕焼市の農家が、笑顔で答えた。
「ありがとう。自慢のメロンだよ」
「また来てね」
夜、交流会。
湊戸区の住民と、夕焼市の住民が、一緒に食事。
「ありがとう。本当に、ありがとう」
夕焼市の高齢者が、涙を流した。
「あなたたちが、この街を救ってくれた」
湊戸区の住民も、涙を流した。
「いえ、こちらこそ」
「こんな素敵な街、知らなかった」
「絶対、また来ます」
小林は、その光景を見ていた。
倉田市長が、横に来た。
「小林くん……」
「はい」
「これが、我々欲なんだな」
倉田は、微笑んだ。
「みんなで支え合う」
「みんなで幸せになる」
小林は、頷いた。
「はい。これが、我々欲です」
夜空を見上げる。
星が、輝いている。
「父さん……見えますか」
小林は、呟いた。
「俺、やり遂げましたよ」
風が、吹く。
優しい風。
まるで、父が答えてくれているかのように。
小林は、微笑んだ。
「これから、日本中に広げます」
「地域創生リーグを」
「我々欲を」
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