第三部:闘争
「僕も消滅させたくないと思いました」交流参加者の涙の声に会場がすすり泣く。反対派の石橋区長が立ち上がる「今日のプレゼンで考えが変わった。私も地方出身だから分かる。賛成します」。スタンディングオベーション。賛成率87.1%、完全勝利。
※この物語は政策エンタメのメソッドによって書かれたフィクションです。
第16章:中区住民説明会
2027年1月15日午前10時、東京・中区民ホール。
会場には、800の椅子が並んでいた。
湊戸区の説明会(500席)よりも、大きな会場。
小林拓也は、舞台袖で資料を確認していた。
隣には、神山健二教授、桜井美咲、結城剛、高瀬麗子議員、氷室徹。
そして、倉田誠市長も来ていた。
「湊戸区の時より、緊張するな……」
小林が、呟いた。
結城が、肩を叩いた。
「大丈夫だ。湊戸区で成功した」
「データも揃ってる」
「絶対に、いける」
桜井が、会場を覗いた。
「客の入り、どう?」
スタッフが、報告に来た。
「現在、750名です」
「ほぼ満席です」
神山教授が、頷いた。
「関心は高い」
「あとは、どう説得するか」
氷室が、資料を確認した。
「湊戸区の1年間のデータ、完璧です」
「12自治体すべてのデータも揃ってます」
「成功例も、失敗例も、すべて開示します」
高瀬議員が、言った。
「石橋区長も、来てますよ」
「最前列に座ってる」
小林が、会場を覗いた。
石橋区長が、腕を組んで座っていた。
厳しい表情。
「あの人を、説得しないと……」
倉田市長が、小林の肩を叩いた。
「小林くん、俺も全力で話す」
「夕焼市の1年間の変化を」
「必ず、伝える」
小林は、頷いた。
「お願いします」
午前10時。
開演。
会場が、静まり返った。
結城剛が、ステージに上がった。
「みなさん、おはようございます」
「本日は、お忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます」
「私は、湊戸区で企業を経営しております、結城剛と申します」
「今日は、地域創生リーグ構想について、ご説明させていただきます」
「この構想は、昨年4月から湊戸区でモデル事業を開始しました」
「1年間の成果が出ましたので、本日、すべてのデータを公開します」
スクリーンに、ロゴが映し出される。
地域創生リーグ 〜地方と都会の逆転劇〜
「まず、地方の現状を知っていただくために……」
「北海道・夕焼市の倉田市長に、お話しいただきます」
拍手。
倉田市長が、ステージに上がった。
「みなさん、おはようございます」
倉田の声が、会場に響く。
「私は、北海道の夕焼市という小さな街から来ました」
「倉田誠と申します」
スクリーンに、夕焼市の写真。
1年前の写真。
閉鎖された学校。
錆びた遊具。
誰もいない商店街。
「この街は……18年前に、財政破綻しました」
会場が、ざわついた。
「人口は、6,000人」
「高齢化率は、54%」
「このままでは、消滅する街でした」
「でも……」
倉田は、次のスライドを開いた。
現在の夕焼市の写真。
新しく建てられたメロンハウス。
整備された道路。
笑顔の子供たち。
「1年前、湊戸区から支援を受けました」
「20億円です」
「この20億円で、この街は生まれ変わりました」
倉田は、データを示した。
夕焼市の1年間の変化:
自主財源:
- 2026年3月:8億円
- 2027年1月:9.8億円(+22.5%)
ふるさと納税:
- 2026年3月:5億円
- 2027年1月:7.2億円(+44%)
人口:
- 2026年3月:5,750人
- 2027年1月:5,712人(減少率▲0.66%)
- 前年同期比:▲5.2% → ▲0.66%(87%改善)
雇用:
- 新規雇用:48名
- Uターン:12家族
住民アンケート:
- 将来に希望を感じる:85%(前年18%)
- この街に住み続けたい:82%(前年45%)
会場から、どよめきが起きた。
「すごい……」
「本当に、変わったんだ……」
倉田は、涙を浮かべた。
「18年間……ずっと、この街を守ってきました」
「でも、どんどん衰退していきました」
「何をやっても、ダメでした」
「でも……湊戸区のみなさんが、支援してくれた」
「この街に、希望が戻りました」
「子供たちが、笑顔で遊んでいます」
「若い夫婦が、戻ってきています」
倉田は、深く頭を下げた。
「本当に、ありがとうございます」
会場から、拍手。
大きな拍手が、会場を包んだ。
石橋区長も、拍手していた。
次に、小林拓也が、ステージに上がった。
「みなさん、こんにちは」
小林の声が、会場に響く。
「私は、夕焼市出身の小林拓也と申します」
「今、倉田市長が話した夕焼市は、私の故郷です」
「私の父は、夕焼市の元職員でした」
「財政破綻の責任を感じ、他界しました」
「父は、死の間際に私に言いました」
「『拓也、この街を、頼む』」
「その言葉が、私を動かしました」
小林は、次のスライドを開いた。
湊戸区モデル事業 1年間の完全報告
期間:2026年4月1日〜2027年3月31日(予定)
参加自治体:
- プラチナリーグ:湊戸区
- チャレンジリーグ:12自治体
支援総額:240億円
マイナポイント:3万円×13.2万人=39.6億円
「まず、湊戸区の住民のみなさんの反応です」
小林が、データを示した。
湊戸区住民アンケート(回答数:5,800名)
満足度:
- 非常に満足:48%
- やや満足:41%
- どちらとも言えない:8%
- 不満:3%
満足度:89%
継続希望:
- はい:91%
- いいえ:4%
- 分からない:5%
交流イベント参加者:
- 累計:3,200名
- 参加者満足度:94%
「湊戸区の住民の91%が、継続を希望しています」
小林が、説明した。
「交流イベントに参加した住民は、特に満足度が高い」
「『地方の魅力を知った』『人生が豊かになった』という声が多数」
会場から、頷く声。
「次に、12自治体の成果です」
小林が、次のスライドを開いた。
12自治体の1年間の成果:
大成功:
- 夕焼市:自主財源+22.5%、ふるさと納税+44%、人口減少率87%改善
- 馬道村:自主財源+18%、ふるさと納税+38%、人口減少率75%改善
- 大谷村:自主財源+15%、ふるさと納税+32%、人口減少率68%改善
成功:
- 津山野町:自主財源+12%、ふるさと納税+28%
- 風間崎村:自主財源+10%、ふるさと納税+22%
- 東目屋村:自主財源+8%、ふるさと納税+18%
- 五津川村:自主財源+7%、ふるさと納税+15%
- 椎木村:自主財源+5%、ふるさと納税+12%
やや苦戦:
- 歌山内市:自主財源+3%、ふるさと納税+8%
- 二笠市:自主財源+2%、ふるさと納税+5%
失敗:
- 上大阿仁村:自主財源▲1%、ふるさと納税+3%
- 吉永町:自主財源▲2%、ふるさと納税+2%
「12自治体のうち……」
小林は、会場を見渡した。
「10自治体が、自主財源を増やしました」
「8自治体が、大きな成果を上げました」
「成功率:83%です」
会場から、拍手。
「しかし……」
小林は、続けた。
「失敗した自治体も、あります」
「上大阿仁村と吉永町です」
スクリーンに、2つの自治体のデータ。
上大阿仁村の失敗要因:
- 支援金の使途が不明確
- 住民への説明不足
- インフラ整備に偏りすぎ
- 産業振興が不十分
吉永町の失敗要因:
- 箱物(ホール建設)に3億円使用
- 住民の反発
- 町長と議会の対立
- 支援金の執行が遅延
「この2つの自治体には、再建支援チームを派遣しました」
小林が、説明した。
「財政の専門家、経営コンサルタント、地域活性化の専門家」
「彼らが、立て直しのプランを作っています」
「現在、両自治体とも改善の兆しが見えています」
「来年度には、プラスに転じる見込みです」
会場が、静まり返った。
「つまり……」
小林は、会場を見た。
「100%成功する政策は、ありません」
「しかし、83%の成功率は、極めて高い数字です」
「そして、失敗した自治体も、支援することで立て直せます」
会場から、拍手。
次に、神山健二教授が、ステージに上がった。
「みなさん、こんにちは」
「私は、行動経済学を研究しております、神山健二と申します」
「今から、『なぜ、この制度が成功したのか』を、心理学的に説明します」
神山教授が、スライドを開いた。
3つの心理効果:
- プロスペクト理論
- 「もらえる」という積極的な便益
- マイナポイント3万円の効果
- 社会的証明
- 「みんながやってる」という安心感
- 湊戸区の91%が継続希望
- 同一視バイアス
- 顔の見える関係
- 交流イベントの効果
「特に、交流イベントの効果は大きい」
神山教授が、説明した。
「湊戸区の住民3,200名が、地方を訪問しました」
「彼らは、『地方を支援している』という実感を得ました」
「そして、『地方の人たちと友達になった』と感じました」
「実際の参加者の声を、紹介します」
神山教授が、次のスライドを開いた。
交流イベント参加者の声:
Aさん(会社員):
「夕焼市のメロン畑を訪問しました。農家の佐藤さんと友達になりました。佐藤さんは、『若い頃は東京に出たかった。でも、今は、この街を守りたい』と言っていました。その言葉を聞いて、泣きそうになりました。私も、佐藤さんを応援したい。だから、この制度を続けてほしいです」
Bさん(主婦):
「馬道村の温泉に行きました。村長さんが、『この温泉は、村の宝だ。でも、お客さんが減って、閉めようと思ってた。でも、湊戸区のみなさんが来てくれて、希望が戻った』と言っていました。私、その場で泣いてしまいました。また行きます。絶対に」
Cさん(IT企業勤務):
「大谷村の農業体験に参加しました。高知県の山奥です。最初は、『こんな田舎、何もないだろう』と思っていました。でも、村の人たちが、めちゃくちゃ温かかった。夜、焚き火を囲んで、村のおじいちゃんが昔話をしてくれました。『この村を、消滅させたくない』と。僕も、そう思いました。だから、この制度を応援します」
Dさん(退職者):
「風間崎村の漁業体験に行きました。青森県です。漁師さんと一緒に船に乗って、魚を釣りました。最高でした。漁師さんが、『東京の人が来てくれて、嬉しい。この村も、まだ頑張れる』と言っていました。私も、第二の人生を、地方と繋がって生きたいと思いました」
会場から、すすり泣く声。
多くの住民が、ハンカチを取り出している。
「これが、制度を持続可能にする力なんです」
神山教授が、続けた。
「単なる『税金を取られる』ではなく……」
「『友達を助けている』という感覚」
「これが、継続への動機になるんです」
会場から、大きな拍手。
次に、桜井美咲が、ステージに上がった。
「みなさん、こんにちは」
「私は、財政コンサルタントの桜井美咲と申します」
「今から、数字で検証します」
桜井が、スライドを開いた。
湊戸区の財政への影響:
支出:
- チャレンジリーグへの支援:240億円
- マイナポイント:39.6億円
- 交流イベント費用:5億円
- 合計:284.6億円
収入:
- 地方交付税削減による財政改善:18億円
- ふるさと納税増加(返礼品経由):3.2億円
- 合計:21.2億円
実質負担:
- 263.4億円(税収4,000億円の6.6%)
影響:
- 区民サービスへの影響:ほぼなし
- 財政調整基金:十分な残高を維持
「つまり、湊戸区は6.6%の負担で、12の自治体を救いました」
桜井が、説明した。
「この負担は、持続可能な範囲です」
「次に、国全体の財政への影響です」
桜井が、次のスライドを開いた。
全国展開した場合の財政シミュレーション(改訂版):
前提条件:
- プラチナリーグ:20自治体
- チャレンジリーグ:241自治体
初年度(1年目):
支出:
- 支援金:241自治体×20億円=4,820億円
- マイナポイント:プラチナリーグ500万人×3万円=1,500億円
- ゴールドリーグ1,000万人×2万円=2,000億円
- 合計:8,320億円
地方交付税削減:
- 初年度:1,200億円
初年度の財政:
- ▲7,120億円(悪化)
しかし……
「ここからが重要です」
桜井が、会場を見渡した。
「10年後の詳細シミュレーションを、お見せします」
10年後の財政予測(詳細版):
前提条件:
- チャレンジリーグ241自治体のうち:
- 5年後:60%(145自治体)がブロンズリーグに昇格
- 10年後:80%(193自治体)がブロンズリーグ以上に昇格
- 残り20%(48自治体)はチャレンジリーグに残留
- 昇格した自治体の効果:
- ブロンズリーグ昇格自治体:支援金不要、地方交付税▲30億円/自治体
- シルバーリーグ昇格自治体:地方交付税▲50億円/自治体
- 支援継続が必要な自治体:
- チャレンジリーグ残留:48自治体×20億円=960億円
10年後の計算:
地方交付税削減:
- ブロンズ昇格自治体:145自治体×30億円=4,350億円
- シルバー昇格自治体:48自治体×50億円=2,400億円
- 合計削減:6,750億円
支援継続費用:
- チャレンジ残留:48自治体×20億円=960億円
- マイナポイント(規模縮小):1,500億円→500億円
- 合計支出:1,460億円
純効果:
- 6,750億円(削減)▲1,460億円(支出)=5,290億円
さらに、ゴールドリーグ・シルバーリーグの自主財源向上効果:
- ブロンズリーグ600自治体の財政改善:▲3,000億円
- シルバーリーグ800自治体の財政改善:▲1,500億円
合計:約1兆円〜1.5兆円の財政改善
会場が、ざわついた。
「1.5兆円……」
「本当に?」
桜井が、答えた。
「はい。ただし、条件があります」
「自治体が、ちゃんと努力すること」
「昇格・降格制度が、ちゃんと機能すること」
「それが、この制度の前提です」
「湊戸区の12自治体を見てください」
桜井が、続けた。
「83%が成功しています」
「つまり、全国展開しても、80%程度は成功する見込みです」
「この計算は、決して夢物語ではありません」
会場から、拍手。
次に、高瀬麗子議員が、ステージに上がった。
「みなさん、こんにちは」
「私は、衆議院議員の高瀬麗子と申します」
「今から、政治的な実現可能性についてお話しします」
高瀬議員が、スライドを開いた。
法案化への道筋(改訂版):
現在:
- 湊戸区でのモデル事業:成功
- 千谷田区でのモデル事業:2027年4月開始予定
- 中区でのモデル事業:本日の説明会次第
次のステップ:
- 2028年夏:3自治体のモデル事業完了
- 2028年秋:法案提出
- 2029年春:国会審議
- 2029年秋:全国展開開始
「つまり、今日、中区のみなさんが賛成してくだされば……」
高瀬議員が、続けた。
「2年半後には、法案化されます」
「そして、日本中に、この制度が広がります」
「241の自治体が、救われます」
「地方が、再生します」
「日本全体が、強くなります」
拍手。
最後に、再び小林拓也が、ステージに上がった。
「みなさん、ここまでの説明、ありがとうございました」
小林が、最後のスライドを開いた。
夕焼けの写真。
オレンジ色の空。
美しい街並み。
「我欲を捨てて、我々欲で」
「我欲……自分だけの利益」
「我々欲……みんなの利益」
「中区だけが栄えても、日本は強くなりません」
「でも、中区が地方を支援すれば……」
「日本全体が、強くなります」
小林は、会場を見渡した。
「みなさん、考えてみてください」
「もし、地方が消滅したら……」
「食料は、誰が作るんですか?」
「水は、どこから来るんですか?」
「自然は、誰が守るんですか?」
「地方は、日本の宝です」
「その宝を、一緒に守りませんか?」
小林は、深く頭を下げた。
「どうか、ご協力をお願いします」
拍手。
大きな拍手が、会場を包んだ。
午前11時30分。
質疑応答の時間。
質問者A(中年男性):
「失敗した2つの自治体、本当に立て直せるんですか?」
小林が、答えた。
「はい。再建支援チームが、現在、全力で取り組んでいます」
「上大阿仁村は、産業振興に軸足を移しました」
「吉永町は、住民との対話を重視し、支援金の使途を見直しました」
「両自治体とも、来年度にはプラスに転じる見込みです」
質問者B(若い女性):
「私、この制度、素晴らしいと思います」
「中区も、ぜひ参加すべきです」
拍手。
質問者C(高齢男性):
「私は、反対です」
会場が、ざわついた。
「なぜ、中区の税金を、地方に送らなきゃいけないんですか?」
「地方が衰退したのは、地方の責任でしょう」
小林は、深呼吸した。
「おっしゃる通り、そういう考え方もあります」
「でも……」
「日本は、一つの国です」
「地方が作る食料を、都市が食べています」
「地方が守る森林が、都市の水を生んでいます」
「もし、地方が消滅したら……」
「都市だけでは、成り立たないんです」
男性は、黙った。
質問者D(中年女性):
「私、実家が田舎なんです」
女性の目が、潤んでいた。
「どんどん、人が減っています」
「このままじゃ、消滅します」
「この制度、絶対に必要です」
「中区のみなさん、お願いします」
「地方を、助けてください」
女性は、涙を流した。
会場から、すすり泣く声。
その時。
最前列から、男性が立ち上がった。
石橋区長だ。
会場が、静まり返った。
「私は、中区長の石橋です」
石橋区長の声が、会場に響く。
「正直に言います」
「私は、この制度に反対でした」
「『中区の税金は、中区のために使う』」
「それが、私の信念でした」
「しかし……」
石橋区長は、小林を見た。
「今日のプレゼンを聞いて、考えが変わりました」
会場が、ざわついた。
「データが、完璧です」
「心理学に基づいています」
「財政シミュレーションも、説得力があります」
「そして、何より……」
石橋区長の目が、潤んでいた。
「倉田市長の話を聞いて、心が動きました」
「私も、地方出身です」
「九州の小さな町」
「だから……地方の苦しみが、分かるんです」
石橋区長は、小林に頭を下げた。
「小林さん、ありがとうございました」
「私、賛成します」
「中区議会にも、推薦します」
会場から、大きな拍手。
スタンディングオベーション。
小林は、涙が止まらなかった。
「石橋区長……」
午後12時。
質疑応答が終わった。
アンケートの配布。
午後1時。
集計結果が出た。
結城が、封筒を開けた。
紙を取り出す。
そして、みんなに見せた。
集計結果:
回答数:742名(回収率98.7%)
賛成率:
- 強く賛成する:398名(53.6%)
- やや賛成する:248名(33.4%)
- どちらとも言えない:58名(7.8%)
- やや反対する:28名(3.8%)
- 強く反対する:10名(1.3%)
賛成(強く賛成+やや賛成):646名(87.1%)
反対(やや反対+強く反対):38名(5.1%)
小林は、数字を見た。
「87.1%……」
神山教授が、叫んだ。
「やった!」
「湊戸区の80.7%を超えた!」
桜井も、微笑んだ。
「完璧よ」
結城が、小林の肩を叩いた。
「小林くん、やったぞ」
高瀬議員も、涙を流していた。
「これで、法案化への道が開けました」
氷室も、興奮していた。
「財務省も、もう反対できない!」
倉田市長は、涙を流していた。
「小林くん……本当に、ありがとう……」
小林も、涙が止まらなかった。
「父さん……見てましたか……」
7人が、抱き合った。
神山教授。
桜井美咲。
結城剛。
高瀬麗子議員。
氷室徹。
倉田誠市長。
小林拓也。
「我々欲チーム、勝利だ!」
結城が、叫んだ。
「万歳!」
みんなが、声を合わせた。
