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地域創生リーグ〜地方と都会の逆転劇〜第6章:運命の出会い

目次

第二部:創造

湊戸区の高層ビルで始まった我々欲チームの初会議。マイナポイント3万円で住民の心を掴み、国の財政も改善するwin-win構造。行動経済学の知恵が、不可能を可能に変える。フレーミング効果と社会的証明。創造編スタート。

※この物語は政策エンタメのメソッドによって書かれたフィクションです。

第6章:運命の出会い

2025年11月27日午後2時、東京・湊戸区。

小林拓也は、高層ビルの前に立っていた。

ガラス張りの外観。

30階建て。

エントランスには、ロゴが輝いている。

「YUKI TECH」

結城剛の会社。


小林は、スマートフォンで時間を確認した。

午後2時。

約束の時間ちょうど。

「行くか……」

小林は、エントランスに入った。


受付。

「小林拓也と申します。結城様とお約束しています」

受付の女性が、電話をかける。

「少々お待ちください」


5分後。

エレベーターから、結城剛が降りてきた。

ラフなシャツ。

ジーンズ。

スニーカー。

経営者というより、エンジニアのような格好。


「よう、小林くん。来てくれたな」

結城は、笑顔で握手を求めた。

「よろしくお願いします」

小林も、握手を返した。


「みんな、もう来てるぜ。上に行こう」

結城は、エレベーターのボタンを押した。

「他の方も?」

「ああ。神山教授と桜井さんは1時間前から来てる」

「早いですね……」

「桜井さんなんて、朝10時から資料作ってたぜ。マジで仕事早い」


25階。

エレベーターが開く。

広いオープンスペース。

デスクが並び、若い社員たちがパソコンに向かっている。

「ここが、うちのオフィス」

結城が、案内する。


奥に、ガラス張りの会議室。

中に、3人の人影が見えた。

神山教授。

桜井美咲。

そして、もう一人。


「高瀬議員も来てくださったんですか?」

小林は、驚いた。

結城が、頷いた。

「ああ。国会の合間を縫って来てくれた」

「忙しいのに……」

「みんな本気だよ。お前の構想に、賭けてる」


会議室に入る。

3人が、立ち上がった。

「小林さん、お待ちしてました」

神山教授が、握手を求めた。

「遅くなって、すみません」

「いえいえ。定刻ですよ」


桜井が、ノートパソコンを開いた。

「じゃあ、始めましょう。時間がもったいない」

高瀬議員が、微笑んだ。

「桜井さん、相変わらず効率重視ですね」

「当然でしょ。ダラダラ会議ほど無駄なものはない」


結城が、コーヒーを配った。

「まあまあ、リラックスしようぜ」

5人が、テーブルを囲んで座った。


神山教授が、口火を切った。

「それでは、小林さん。まず、あなたの構想を整理しましょう」

「フォーラムでは時間が限られていたので、詳細を伺いたい」


小林は、ノートパソコンを開いた。

「はい。資料を用意してきました」

プロジェクターに、スライドが映し出される。


スライド1:自治体財政リーグ構想

〜スポーツに学ぶ、地方創生の新しい形〜

提案者:小林拓也(夕焼市)

小林は、説明を始めた。

「私の故郷、夕焼市は財政破綻から18年が経ちました」

「人口6,000人。高齢化率54%」

「自主財源はわずか8億円。地方交付税に依存しています」


スライド2:現状の問題

地方の危機:
・人口減少、高齢化
・財政破綻、消滅可能性

従来の施策の限界:
・地方交付税:19兆円でも不足
・ふるさと納税:個人の善意に依存、不安定

「そこで、私が考えたのが……」

小林は、次のスライドを開いた。

スライド3:メジャーリーグの贅沢税

強いチームが、弱いチームを支える
→ リーグ全体が強くなる

例:ニューヨーク・ヤンキース
・年俸総額350億円
・贅沢税約90億円を支払い
・小規模チームに分配

「自治体も、同じ仕組みが使えるのではないか、と」

小林は、次のスライドを開いた。

スライド4:自治体財政リーグ構想

全国1,741自治体を5つのリーグに分類:

Aリーグ(20自治体):湊戸区、千谷田区など
Bリーグ(80自治体):横浜野市、名古屋市など
Cリーグ(800自治体):一般的な地方都市
Dリーグ(841自治体):過疎化が進む自治体
 → D1リーグ:600自治体
 → D2リーグ:241自治体

AリーグとBリーグが税収の一部を拠出
→ Dリーグに分配

神山教授が、眼鏡を直した。

「興味深い。リーグを細分化する理由は?」

小林は、答えた。

「D1とD2に分けることで、昇格のハードルを下げるためです」

「D2からD1への昇格は、比較的達成しやすい」

「小さな成功体験を積み重ねることで、自治体のモチベーションを維持できます」



桜井が、質問した。

「拠出額は?」

小林は、次のスライドを開いた。

スライド5:拠出額と分配額

Aリーグの拠出:
・湊戸区の税収:約4,000億円
・拠出率:10%
・拠出額:400億円

Bリーグの拠出:
・横浜野市など80自治体
・合計:約2.4兆円

分配:
・D2リーグ(241自治体):Aリーグから分配
 → 1自治体あたり約20億円
・D1リーグ(600自治体):Bリーグから分配
 → 1自治体あたり約40億円

桜井が、電卓を叩いた。

「20億円……夕焼市の自主財源の2.5倍ね」

「ただし、地方交付税が削減される」

「トータルで、本当にプラスになるの?」

小林は、頷いた。

「そこが、まだ詰め切れていないんです」

「地方交付税の削減幅を、どう設定するか……」

桜井が、ノートパソコンを叩き始めた。

「OK。私がシミュレーションする」


結城が、質問した。

「で、湊戸区の住民は納得すんの?」

「自分の税金が減るわけじゃないけど、心理的な反発はあるだろ」

「『俺らの金を地方に送るな』ってさ」


小林は、言葉に詰まった。

「それが……一番の課題です」

神山教授が、口を開いた。

「そこで、行動経済学の出番です」


神山教授が、ホワイトボードに立った。

「人間の意思決定には、2つのシステムがあります」

「システム1:直感的、感情的」

「システム2:論理的、分析的」


「税金の話は、通常システム2で処理されます」

「しかし、システム1に訴えかける方法があれば、賛成率は上がる」

「それが、『フレーミング効果』と『社会的証明』です」


結城が、首を傾げた。

「フレーミング?」

神山教授が、説明した。

「同じ内容でも、提示の仕方で印象が変わるんです」


神山教授が、ホワイトボードに書いた。

パターンA:
「あなたの税金の10%を、地方に送ります」

パターンB:
「あなたに3万円のマイナポイントを差し上げます。
その代わり、湊戸区が地方を支援します」

「どちらが、受け入れられやすいと思いますか?」

神山教授が、問いかけた。

結城が、答えた。

「パターンB、だな」

「正解です」


小林の目が、輝いた。

「マイナポイント……!」

神山教授が、頷いた。

「獲得効用の最大化です」

「税金が『取られる』感覚ではなく、『もらえる』感覚を与える」

「これで、システム1の感情的反発を抑えられます」


桜井が、質問した。

「3万円の根拠は?」

神山教授が、答えた。

「プロスペクト理論に基づく実証研究では、3〜5万円が最適値です」

「これ以上だと、財政負担が大きい」

「これ以下だと、インセンティブとして弱い」


高瀬議員が、質問した。

「マイナポイントの財源は?」

桜井が、答えた。

「地方交付税の削減分で賄える」

「計算してみる」

桜井が、Excelを開いた。

カタカタとキーボードを叩く。

数分後。

「出た」

桜井が、画面を見せた。

湊戸区の試算:

現状:
・税収:4,000億円
・住民数:約25万人
・納税者:約15万人

新制度:
・拠出額:400億円(税収の10%)
・夕焼市など20自治体に分配(1自治体20億円)
・マイナポイント:15万人 × 3万円 = 45億円
・地方交付税削減額:約100億円

国の負担:
・マイナポイント:45億円
・地方交付税削減:100億円
・純削減:55億円

→ 国の財政は改善する

結城が、口笛を吹いた。

「マジか。国の負担が減るのかよ」

桜井が、頷いた。

「そう。しかも夕焼市の財政も改善する」

「win-winの構造」

小林は、感動していた。

「これなら……いける」

神山教授が、微笑んだ。

「ただし、条件があります」

「何ですか?」

小林は、聞いた。

神山教授が、答えた。

「住民の同意率です」

「少なくとも70%以上の同意が必要」

「それ以下だと、制度として成り立ちません」

結城が、腕を組んだ。

「70%か……厳しいな」

「でも、やってみる価値はある」

高瀬議員が、頷いた。

「政治的にも、『住民の7割が賛成』という数字があれば、国会で推しやすい」

桜井が、質問した。

「同意率を上げるための施策は?」

神山教授が、答えた。

「社会的証明です」

「『あなたの隣人も賛成しています』という情報を提示する」

「人間は、他者の行動に影響されやすい」


結城が、アイデアを出した。

「じゃあ、俺の会社で社員にアンケート取ってみるか」

「湊戸区の住民だし、ビジネスマンだから意見も聞きやすい」

「それで賛成が多ければ、『湊戸区の企業も賛成』ってPRできる」


高瀬議員が、頷いた。

「素晴らしい。実証データがあれば、政治家としても動きやすい」
小林が、感謝した。

「みなさん、ありがとうございます」


桜井が、時計を見た。

「もう5時ね。今日はここまでにしましょう」

「次回までの宿題を整理するわ」


桜井が、ホワイトボードに書いた。

【次回までの宿題】

小林:
・夕焼市の詳細財政データ
・D2リーグ全241自治体のリスト

桜井:
・全国展開した場合の財政シミュレーション
・地方交付税削減額の精緻な計算

神山教授:
・住民同意率を高めるための施策案
・行動経済学に基づく制度設計

結城:
・湊戸区の企業・住民へのアンケート調査
・経営者ネットワークへの根回し

高瀬議員:
・国会での法案化に向けた与野党調整
・総務省・財務省へのヒアリング

【次回ミーティング】
12月10日(土)14:00
場所:YUKI TECH 会議室


◀第5章目次第7章▶


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