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【推理小説】レールの影 第十一章 広がる波紋

第十一章 広がる波紋

※この物語はフィクションです。

第11章 広がる波紋
東京・名古屋でも相次ぐ通報。大阪を超えて広がる影の波紋が、全国を揺るがそうとしていた。

新幹線が停止した直後、構内には安堵と混乱が入り混じった空気が漂っていた。

避難する人々の顔には恐怖の色が残り、スマートフォンを構える者、泣き出す子どもを抱きしめる親の姿があった。

佐伯は無線に向かって声を荒げた。

「影の指揮者の通信、逆探知はできなかったのか!」

「試みましたが、複数のリレーサーバを経由しており、発信元は特定不能です」

冷静な報告が返る。

三浦は唇を噛んだ。

「まるで、最初から追跡されることを計算に入れているみたい……」

佐伯は沈黙したまま構内を見渡す。恐怖に染まった人々の表情こそが、奴らの狙いそのものだと痛感していた。

一方で、高田は拘束されながらも複雑な表情を浮かべていた。

「俺はただの盗人だ。なのに、何で俺がこんなでかい戦いに巻き込まれてるんだ……」

声は掠れていたが、その目には逃げない覚悟が宿り始めていた。

その時、新たな報告が飛び込んできた。

「東京駅構内で不審物情報! さらに名古屋でも同様の通報あり!」

室内の空気が凍りつく。

「全国同時多発……!」

三浦の声が震えた。

佐伯は深く息を吐き、無線に短く告げた。

「全鉄道警察隊へ通達。作戦は全国規模へ移行する。大阪は出発点に過ぎない。これからが本当の戦いだ」

遠くでサイレンが鳴り響き、空には夜明けの光が差し始めていた。

だがその光は、新しい一日の始まりを告げるものではなく、さらに大きな嵐の前触れにしか見えなかった。

高田は窓の外を見つめながら小さく呟いた。

「……ここから先は、俺の過去ごと清算することになるのかもしれねえな」

影の指揮者の姿はまだ闇の中にある。だが、その手はすでに全国へ伸び始めていた。

【次回予告】
第12章 東への疾走
朝の東京駅。群衆の雑踏に紛れて動く黒い影。高田の記憶に刻まれた声が、再び蘇る。

◀第10章はこち

目次

登場人物

佐伯涼介(35)
鉄道警察隊の巡査部長。冷静で論理的。家族を顧みず仕事に没頭してきた。

三浦真帆(28)
新人隊員。正義感が強いが経験不足。佐伯に反発しつつ尊敬もしている。

高田健吾(45)
老練なスリ師。かつては刑務所暮らし、今は仲間を率いる。だが「なぜか高リスクなターゲットばかり狙う」違和感。

イブラヒム(32)
外国人労働者。真面目に働いていたが、祖国の紛争で家族を失い、日本で過激派の片棒を担がされる。

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