※この物語はフィクションです。
前回までのあらすじ: 給食センター見学で子どもたちの目が輝いた。三千食を作る現場の迫力と栄養士の田辺さんの熱い思いに触れ、発芽カリキュラムに手応えを感じ始めた美咲。子どもたちも給食への関心を深め、各教科での学習が自然につながり始めていた。
今回の見どころ: しかし、突然の嵐が美咲を襲う。保護者から「実験台にされている」という厳しい声が上がり、PTA会長からの詰問に心が折れそうになる美咲。果たして発芽カリキュラムへの理解は得られるのか。保護者説明会での美咲の必死の訴えと、意外な支援者の登場が物語を大きく動かす…
発芽カリキュラムを始めて一ヶ月が経った頃、予想外の問題が発生した。
保護者の一部から苦情が寄せられたのだ。
「授業時間が足りないんじゃないですか?」
参観日の後、PTA会長の佐々木さんが美咲に詰め寄った。
「国語は国語、算数は算数でしっかり教えてほしい」
「確かに従来とは違う方法ですが…」
美咲は困惑した。
「中学受験を考えている家庭もあります。実験台にされているような気がします」
佐々木さんの言葉は厳しかった。
その夜、美咲は校長の田中に呼び出された。
「保護者からの苦情、聞いています」
田中の表情は深刻だった。
「申し訳ありません」
美咲は頭を下げた。
「いえ、西川先生の責任ではありません。私たちの説明不足です」
田中はため息をついた。
「来週、保護者説明会を開きます。発芽カリキュラムについて、きちんと説明しましょう」
保護者説明会の日、体育館には多くの保護者が集まった。
美咲は緊張で手が震えていた。
田中校長の挨拶の後、美咲が発芽カリキュラムについて説明した。
「発芽カリキュラムは、子どもたちの学習意欲を高め、より深い理解を促すことを目的としています」
美咲は子どもたちの作品や、見学の様子を写真で紹介した。
「確かに従来とは違う方法ですが、基本的な学習内容はきちんと押さえています」
説明が終わると、質問が相次いだ。
「テストの成績に影響はありませんか?」
「中学受験への対応は大丈夫ですか?」
美咲は一つひとつ丁寧に答えた。
「まだ始めたばかりで、長期的な効果は分かりません。でも、子どもたちの学習への取り組み方は明らかに変わっています」
その時、後ろから手が挙がった。健太の母親だった。
「息子が家で給食の話ばかりしています。今まで食べ物に無関心だったのに、栄養について調べたり、農業に興味を持ったり。親として、とても嬉しく思っています」
他の保護者もうなずいた。
花音の母親も立ち上がった。
「娘が『先生と一緒に勉強している』と言っています。上から教えられるのではなく、一緒に学んでいるという感覚が新鮮だと思います」
会場の雰囲気が少しずつ変わってきた。
最後に佐々木PTA会長が発言した。
「私も最初は心配でした。でも、今日の説明を聞いて、西川先生の熱意を感じました。子どもたちのために一生懸命取り組んでくださっていることがよく分かります」
会場から拍手が起こった。
「ただし、きちんと検証しながら進めてください。子どもたちの学力向上につながるかどうか、しっかりと見守らせていただきます」
美咲は深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。子どもたちのために、最善を尽くします」
第4話完
※この物語はフィクションです。登場する人物・組織名等は架空のものであり、実在の人物・企業とは関係ありません。