※この物語はフィクションです。
前回までのあらすじ: 新たなテーマ「お米」で発芽カリキュラムが再始動。バケツ稲栽培に挑戦し、子どもたちの学習意欲が高まった。各教科での学習が有機的につながり始め、健太は農業への夢を抱くように。小さな苗が成長するように、子どもたちの学びも深まっていく。
今回の見どころ: ついに稲穂が実り、収穫の時期を迎える。花音の「発芽カリキュラムって本当に種みたい」という言葉に、美咲は教育の本質を見出す。一年間の集大成となる発表会を前に、美咲と子どもたちが感じた発芽カリキュラムの真の価値とは…
夏休みが近づいた頃、稲に花が咲いた。
「稲の花って、こんなに小さいんだ」
子どもたちは虫眼鏡で観察した。
「この花が実になって、お米になるんだよね」
花音が感慨深そうに言った。
「自然ってすごいなあ」
健太がつぶやいた。
夏休み中も、子どもたちは交代で稲の世話をした。水やりを欠かさず、愛情を込めて育てた。
そして、二学期が始まった頃、稲穂が実った。
「お米ができてる!」
子どもたちの歓声が校庭に響いた。
「みんなで大切に育てたお米ですね」
美咲も感動していた。
収穫したお米は少量だったが、子どもたちにとっては宝物だった。
「このお米で、おにぎりを作りたい」
花音が提案した。
「いいね。みんなで食べよう」
美咲は家庭科室を借りて、収穫したお米でおにぎりを作ることにした。
おにぎりパーティーの日、子どもたちは自分たちで育てたお米のおにぎりを味わった。
「おいしい!」
「すごく甘い」
「今まで食べたお米の中で一番おいしい」
子どもたちの笑顔が印象的だった。
「先生、ありがとうございました」
花音が代表してお礼を言った。
「ありがとうは、私の方です。みんなと一緒に、たくさんのことを学ばせてもらいました」
美咲は子どもたちを見回した。
四月の頃と比べて、一人ひとりが大きく成長している。学習への取り組み方が変わり、興味関心の幅が広がり、友達同士の協力も深まった。
「発芽カリキュラムって、本当に種みたいですね」
花音が言った。
「どういうこと?」
美咲が聞き返した。
「最初は小さな種だったけど、みんなで大切に育てたら、大きく成長した。私たちの学習も同じだと思います」
美咲は花音の言葉に感動した。子どもたちは、発芽カリキュラムの本当の意味を理解していたのだ。
第6話完
※この物語はフィクションです。登場する人物・組織名等は架空のものであり、実在の人物・企業とは関係ありません。
次回最終話「それぞれの発芽」 – 一年間の集大成となる発表会